更年期と子宮筋腫
子宮筋腫は女性ホルモンにより発育するため、30代から40代の女性では3~4人に1人の割合で何らかの子宮筋腫が存在します。
無症状で経過することが多いのですが、一部の人で過多月経や貧血、下腹痛や腰痛、不妊症などの原因となります。
閉経(生理がなくなる)を迎えると、女性ホルモンが急激に低下することから、それ以降、通常、大きくなる心配は要らないことになります。
“閉経後、子宮筋腫は大きくならないのでしょうか”は外来でよく受ける質問です。答えは“はい”でいいのですが、いくつか注意点があります。
近年、超音波検査の進歩により、子宮筋腫を指摘される人が増えていますが、良性疾患でもあり、様子を見たいと考える人は多くいます。
また、治療法も手術療法、薬物療法、動脈塞栓術、超音波破砕など多岐にわたります。
手術の必要性の有無や治療法に関して、一箇所の病院だけでなく、別の病院の意見を求める人も増えています(これはセカンドオピニオンと呼ばれる)。もちろん外科的手術の適応になる子宮筋腫は少なからず存在します。
しかし、子宮筋腫が見つかっても、定期的に経過を観察していく人はもっと多いのです。
そこで、今回は更年期女性の子宮筋腫を経過観察する場合(手術の適応でない場合)の注意点を述べてみたいと思います。
1.悪性の可能性の否定
子宮肉腫でないことを確認することは必須です。
100%の鑑別方法はありませんが、MRI(磁気共鳴映像法)が最も有用な検査です。
子宮肉腫は血管が豊富で、凝固壊死、周辺への浸潤が存在することが多いので、MRIによりこれらの所見が特徴的な像として確認できることがあります。
また、血液中のある種の腫瘍マーカーの上昇が見られることがあります。現状ではMRI撮影と血液検査は原則行っておくほうがよいでしょう。
2.薬物療法中大きくなる子宮筋腫は要注意
子宮筋腫は女性ホルモンにより発育することから、逆に、女性ホルモンを下げれば子宮筋腫は縮小します。
これが子宮筋腫への薬物療法の基本概念です。しかし、薬物療法時に子宮筋腫の急激な増大を認める場合には外科的治療を優先します。
3.閉経後の発生や閉経後増大する子宮筋腫は要注意
閉経後の子宮筋腫発生や閉経後増大する子宮筋腫は子宮肉腫の可能性がありますので、注意が必要です。
4.更年期女性の子宮筋腫薬物療法時の注意点
まもなく閉経を迎えるということであれば、手術をせずに閉経まで薬物療法を継続することがあります。
これは逃げ込み療法と呼ばれます。長期薬物療法では骨密度の低下などの副作用が出現します。
更年期女性の子宮筋腫への薬物療法時には骨密度減少予防が大切です。
工夫をすれば骨密度を低下させずに薬物療法を継続することは可能です。
5.子宮筋腫の変性
閉経後、本当の子宮筋腫であれば(子宮肉腫でない)増大はしませんが、内容が変性(硝子様、脂肪など)することはあります。
その場合、極めて少ない頻度ですが炎症や感染を起こし、腹痛などを呈することがあります。
子宮筋腫を指摘され、心配している更年期女性はたくさんいらっしゃいます。
まず重要な点は治療の必要性の有無と治療方法の選択です。経過観察となれば、上記注意点を確認の上、定期的な観察を行い、異常の早期発見に努めることが大切だと思います。
更年期以降の子宮筋腫の定期健診は、個々に応じて対応に差があり、およそ2・3ヶ月~1年間隔となります。