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婦人科専門外来で扱う病状・病気


子宮筋腫のお話

  子宮の病気で最も多いのが子宮筋腫です。実は、私は20年近く、この子宮筋腫がどうして大きくなるのか基礎研究で調べるとともに、多くの患者さんを珍てきましたので、この病気には思い入れがあります。子宮は女性ホルモンを分泌すると思っておられる方がいらっしやいますが、女性ホルモンを分泌するのは卵巣です。女性ホルモンに反応して月経を起こしたり、赤ちゃんを育みますが、閉経後はほぼ筋肉の塊と考えていいと思います。だからといって簡単に子宮を切除していいわけではありません。精神面への影響、また、女性は子宮で考えるともいわれますので、我々男性には考えられない力を持っているかもしれません。できれば、一生、子宮を持っていたいと思ってらっしゃる方も多いと思います。

◆原因◆
子宮筋腫はもともと存在する平滑筋という成分が過剰に増えたものですから良性です。性成熟期の女性に多く、女性ホルモンで大きくなりますが、なぜか消化管や血管壁を構成する平滑筋にはめったにできません。平滑筋腫瘍の95%は子宮にできることから偏りがあります。30〜40歳代では3〜4人にひとりが何らかの子宮筋腫を持っていますが、大きくなるかどうか、また、その大きくなる速度も個々で違います。体質(遭伝子の問題)も含めて、原因は完全に解明されていません。

  ◆症状◆
症状としては強い月経痛、多い月経量、不妊症が三大症状です。月経量は他人との比較がむずかしいため、自分で多いと気づいていない人もいます。たまたま血液検査で貧血が判明し、その原因を調べる段階で子宮筋腫が見つかることもよくあります。大きくなると頻尿、腰痛、便秘(それぞれ膀胱、神経、腸の圧迫のため)などが起こることもあります。子宮筋腫はできる場所、発育の方向、大きさにより症状に差が見られます。子宮の内腔(赤ちゃんが宿る場所)に発育しますと、小さくとも月経量は増えます。また、大きくても外に発育する場合はかなり大きくなっても無症状のことが多くなります。
◆治療◆
どこにどれくらいの大きさの筋腫があるかを正確に把握します。検査では貧血の程度が大切です。症状と大きさ、年齢、妊娠予定、悪性の可能性から方針を決めます。経過観察、保存的治療(薬物療法)、手術があります。その他、月経量が多い症例に血流を遮断することも行なわれています。薬物療法は女性ホルモンを抑える(月経がなくなる)ことによる更年期様症状の出現や骨密度減少などの副作用の観点から一般的に長期投与は控えられています。薬物療法により子宮筋腫は縮小し、貧血は改善しますが、治療終了後はもとの大きさに戻ります。私どもは、薬物療法の副作用である骨密度減少を防ぎながら長期間にわたって薬物療法を継続し、症状のない快適な状況を長く維持する工夫を実施しています。手術に関しては、筋腫のこぶだけの摘出と子宮を摘出する手術があります。子宮摘出には膣からのアプローチと開腹する場合があります。また、筋腫のこぶの摘出には腹腔鏡で行なえる場合もあります。

◆最後に◆
子宮筋腫がみつかると、まず、正確に筋腫の病状を把握することが大切です。定期的な経過観察でよいものも結構あります。治療を行なう場合にもたくさんの選択肢があります。自分の子宮筋腫がどんなものであるのかよく聞いて、また、自分の状況もよく考えて自分に適した治療法を選ぶことが大切です。医師のなかでも治療方針に若干の差がありますし、他人の場合が自分に当てはまるとも限りません。それぞれで違うのです。十分な説明を聞いた後は、納得のいく選択です。確かに、手術がどうしても必要な人はいます。しかし、最近は、何の症状もないのに子宮筋腫が見つかる人も増えています。ご相談があればどうぞ。
(林産婦人科 婦人科専門外来担当医)

 

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